AIの出力は全部「プレーンテキスト」問題

AIコーディングエージェントに「このプランをレビューして」「この差分を直して」と頼むとき、 私たちはたいていターミナルに流れるプレーンテキストを眺めて、言葉で修正指示を返しています。 「3つ目の見出しのところ、もう少し具体的に」「そのエラーハンドリング、null チェックが抜けてる」—— こうした指示は「どこを」指しているのかが曖昧になりがちで、エージェントが別の箇所を直したり、 意図がずれたりします。

問題の根っこは、エージェントがプラン・コード・UIをすべて同じテキストとして扱う点にあります。 しかし人間がレビューするときは、プランには整形された文章ビューが、コードには構文ハイライト付きの差分が、 フロントエンドには実際に動く画面が必要です。Critはこの断絶を埋めるために作られた ローカルファーストのCLIツールです。

核心:エージェントとのレビューループ

Critの本質は単発のビューアではなく「レビューの往復(ループ)」にあります。 エージェントとのやり取りは次の流れで回ります。

flowchart TD
    A["エージェントが成果物を生成<br/>(プラン / コード / UI)"] --> B["/crit でレビューUIを起動"]
    B --> C["ブラウザで行コメントを残す<br/>Finish または Approve"]
    C --> D{"未解決コメントは<br/>あるか?"}
    D -->|あり| E["コメントがエージェントに戻る"]
    E --> F["エージェントが修正して<br/>再度 Crit を起動"]
    F --> G["前ラウンドとの差分を表示"]
    G --> C
    D -->|なし(承認)| H["レビュー完了"]
Critのレビューループ:コメント→修正→差分表示を、コピペなしで往復する

ポイントはラウンド間の差分(round-to-round diff)が表示されることです。 エージェントがコメントを受けて修正したあと、「前回から何が変わったのか」を分割ビューまたは ユニファイドビューで確認できます。全体を読み直す必要はなく、変更点だけを追えます。

3つの出力タイプを自動検出

Critは引数から出力タイプを判別し、それぞれに合ったUIをレンダリングします。

# コード差分:引数なしでgitの変更を自動検出し、構文ハイライト付き差分を表示
crit

# プラン:Markdownを整形表示してレビュー(複数指定も可)
crit plan.md
crit plan.md api-spec.md

# フロントエンド(起動中のdevサーバ):プロキシしてレビューUIを重ねる
crit http://localhost:3000

# フロントエンド(静的HTML):ランディングページなどをレンダリングしてレビュー
crit landing.html

差分レビューでは、単一行はクリック、複数行はドラッグで範囲選択してコメントできます。 コメントはGitHubのPRレビューと同じく、対象行の直後にインライン表示されます。

インストール

Crit本体はGo製の単一バイナリです。主要な導入方法は以下のとおり。

# Homebrew(macOS / Linux)
brew install crit

# Go(1.26+ が必要)
go install github.com/tomasz-tomczyk/crit@latest

# Nix
nix profile install github:tomasz-tomczyk/crit

# Windows は Releases から crit-windows-*.exe を取得し、
# crit.exe にリネームして PATH に配置

Send to agent:コメントを直接エージェントに送る

Critが単なるレビューツールと一線を画すのが「Send to agent」です。 レビュー画面の各コメントにある「Send now」を押すと、そのコメントが直接エージェントに渡り、 自動で修正が走るようになります。設定はグローバル設定の agent_cmd に エージェント起動コマンドを書くだけです。

{
  "agent_cmd": "claude --dangerously-skip-permissions -p"
}

仕組みはシンプルです。「Send now」を押すと、コメント本文・選択したテキストの引用・ファイルパス・ 行範囲が標準入力(stdin)でエージェントに渡され、エージェントの標準出力(stdout)が 返信として自動投稿されます。エージェントがファイルを編集すればCritがファイル監視で検知し、UIを更新します。 一度やり取りするとコメントはライブスレッド(⚡ live)になり、以降の返信は再クリック不要で 自動的にエージェントへ送られ、会話履歴も引き継がれます。

Claude Codeの権限モードは agent_cmd のフラグで調整します。

権限モードagent_cmd の例できること
フルアクセスclaude --dangerously-skip-permissions -p読み書き・任意ツール実行すべて可
選択的アクセスclaude --allowedTools Edit,Read,Bash,Write,Glob,Grep -p許可したツールのみ実行可
権限なしclaude -pコメントに返信できるがファイル編集は不可

対応エージェントはClaude Codeだけではありません。OpenCode(opencode ask)、 Cline(cline --pipe)、Aider(aider --message-file -)、 Cursor(実験的、cursor --pipe)など、stdin/stdoutで対話できるエージェントを差し替えられます。

Claude Codeプラグイン:/crit で全自動化

Claude Codeユーザーはプラグインを入れると、レビューループを/critスラッシュコマンド一発で回せます。

# Claude Code に Crit プラグインを追加
claude plugin marketplace add tomasz-tomczyk/crit
claude plugin install crit@crit

会話中に /crit を実行すると、Critがコンテキスト(プラン/差分/フロントエンド)を 自動検出してレビューUIを起動し、レビュー完了まで待機します。あなたが残したコメントは そのまま会話に戻り、エージェントが修正して——承認されるまでこれが繰り返されます。プロンプトの手動コピペが一切不要になるのが最大の利点です。

共有とGitHub PR連携

レビューはローカルで完結しますが、必要なら他者と共有できます。共有したときだけファイルが 外部(デフォルトは crit.md)にアップロードされます。

# 非同期レビュー用に公開URLを発行(QRコードも表示可能)
crit share plan.md
crit share plan.md --qr

# 組織単位で共有(可視性も指定可)
crit share plan.md --org acme --visibility organization

# 共有を取り下げる
crit unpublish

# GitHub PR とコメントを同期(gh CLI が必要)
crit pull            # 現在のブランチからPRを自動検出して取り込み
crit pull 42         # PR番号を明示
crit push            # ローカルのコメントをPRへ投稿
crit push --dry-run  # 投稿せずプレビュー

共有レビューでは複数人のコメントが著者ごとに色分けされます。crit.md はcrit-webでセルフホストもでき、share_url を空文字にすれば共有機能自体を無効化できます。

その他の実用機能

  • ブランチごとのレビュー隔離:各ブランチが独自のレビューファイルを持ち、切り替えてもコメントが失われない。
  • ドラフト自動保存:レビュー途中でブラウザを閉じても、次回そこから再開できる。
  • 並行レビュー:インスタンスごとに別ポートで動くため、複数のプランを同時にレビュー可能。
  • ライブファイル監視:ソースが変わるとブラウザが自動リロード。
  • Vim風キーバインド:j/k で移動、c でコメント、Shift+F でFinish、? でキー一覧。
  • テレメトリなし:解析データは一切収集しない(将来追加されても明示的オプトイン)。

Orcaや通常のレビューとの立ち位置

「AIエージェント × レビュー」という文脈で混同しやすいツールとの違いを整理します。

観点CritGitHub PR レビューターミナルに直接指示
主な役割エージェント成果物への行コメント→修正指示人間同士のコード変更レビュー自然言語で口頭指示
対象プラン / 差分 / フロントエンド主にコード差分何でも(曖昧になりがち)
「どこ」の指定✅ 行・範囲をクリック/ドラッグで正確に指定✅ 行単位で指定❌ 言葉頼みで曖昧
エージェントへの返送✅ Send to agent / スラッシュコマンドで自動△ 手動でコピペ△ 都度入力
ラウンド間差分✅ 前回からの変更を表示△ PR全体の履歴❌ なし
ライセンス・価格MIT・無料GitHub依存

どんな場面で効くか

  • 実装前のプランレビュー。エージェントが立てた設計プラン(Markdown)に対し、「この章はもっと具体的に」「この前提は誤り」と行単位で指摘し、そのまま修正させられる。
  • コード差分の精密レビュー。「言葉でどの行か説明する」コストをゼロにし、null チェック漏れやエラーハンドリングの問題を該当行にピン留めして返せる。
  • フロントエンドの見た目修正。起動中のdevサーバをプロキシし、実際の画面を見ながらレビューコメントを残せる。
  • チームでの非同期レビュー。公開URLやGitHub PR連携で、他者のコメントも巻き込んでエージェントに反映できる。

まとめ

  • ① 「どこが問題か」を行で指せる。Critはプラン・差分・フロントエンドを出力タイプごとに最適なUIで表示し、GitHubのPRレビューのように行・範囲を指してコメントできる。言葉頼みの曖昧な指示から卒業できる。
  • ② レビューは往復(ループ)で回る。コメント→修正→ラウンド間差分の表示、という往復をコピペなしで繰り返せる。Claude Codeなら /crit でこの全工程が自動化される。
  • ③ ローカルファースト・無料・安全設計。単一バイナリでローカル動作し、共有しない限りファイルは手元に留まる。agent_cmd をグローバル設定限定にするなど、任意コマンド実行への配慮も効いている。

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