組織開発とエンゲージメント
組織文化・サーベイ・エンゲージメント・1on1・OKR——「組織を良くする」施策群を、測定系とフィードバックループの設計問題として捉え直す。LewinのTグループからエンゲージメントサーベイ市場の形成までの80年史、Kahn・Gallup・Utrecht学派という3つの系譜と定義の混乱、Gallupメタ分析(ρ=0.49)の正しい読み方と因果の罠、サーベイ設計の統計学と匿名性の技術、ベンダー「ドライバー分析」の中身(相関 vs Shapley値)と組織ネットワーク分析、ヤフー1on1とマネジャー・クライシス、目標設定理論とOKRの評価分離論争、人的資本開示とEU AI Act感情認識禁止まで。エンゲージメントを「感想」から「観測対象」に変える全8章。
目次
- 第1章第1章: 組織開発とは何か — Tグループからサーベイ市場まで80年の系譜Lewinの場の理論・アクションリサーチ・Tグループの偶然の誕生、Likertのサーベイフィードバック、「OD」命名(1959年頃)、日本の感受性訓練ブームと挫折、2010年代の再ブーム、人的資本開示が駆動するエンゲージメントサーベイ市場の形成まで。「関係性への働きかけ」というODの定義をフィードバックループの設計として読み直す出発点。→
- 第2章第2章: エンゲージメントの科学 — 3つの系譜と定義の混乱Kahn 1990(有意味感・安全性・利用可能性)、Gallup Q12(実は職務満足とr=.91)、Utrecht学派UWES(活力・熱意・没頭)+JD-Rモデルという3系譜を整理。従業員エンゲージメント・ワーク・エンゲイジメント・ES・eNPSの用語地図、心理的安全性との接続、「エンゲージメント=愛社精神」という日本的誤解を解体する。→
- 第3章第3章: エンゲージメントは業績を上げるのか — メタ分析と因果の罠Gallup Q12メタ分析第11版(347組織・336万人、複合業績ρ=0.49)のアウトカム別効果量を精読し、因果か逆因果かの研究(Harter 2010)を検討。「日本の熱意6%」の正しい読み方(閾値設計・文化的回答バイアス)、eNPSの統計的批判(NPS再現失敗研究・日本平均-62.5)まで、ベンダー言説と研究エビデンスを峻別する。→
- 第4章第4章: サーベイ設計と運用 — 「測って終わり」を工学するセンサス vs パルスの使い分け、信頼性・妥当性と回答バイアス検出、匿名性の技術と法律(再識別リスク・表示閾値3〜5名・個人情報保護法・ストレスチェック制度との違い)。中原淳のサーベイフィードバック(見える化→ガチ対話→未来づくり)と「実践できている企業3%」問題、Geppo読込会議・回答率96%に見る好循環の設計。→
- 第5章第5章: サーベイデータ分析 — ドライバー分析とONAのアルゴリズムベンダー「Impact」の中身は単純相関(Culture Amp/Glint)か、Shapley値回帰(Qualtrics)か。Johnson's RWA・SHAP・リッカート尺度を距離扱いする罠(Liddell & Kruschke 2018)・チーム集計の正当化(rwg/ICC)・組織ネットワーク分析(ONA)のグラフアルゴリズム・LLMテキスト分析・因果推論(Illinois Wellness Study)まで、エンジニアの主戦場を歩く。→
- 第6章第6章: 1on1とマネジャー — 対話をエンジニアリングするGrove『High Output Management』からヤフー2012年全社導入(週1・30分、満足度92.9%)まで。傾聴・コーチング・ティーチング・フィードバックの使い分け、フィードバック介入理論(1/3のケースで逆効果)、Google Project Oxygen、パワハラ境界の法律論、そしてGallup 2026が示す「マネジャー・クライシス」。→
- 第7章第7章: OKRとMBO — 目標設定の科学と評価との距離設計Druckerの原義(目標と自己統制)→日本での評価制度化という変質→Grove iMBO→Doerr→Google。目標設定理論(Locke & Latham)という理論的根拠、「60〜70%達成が健全」の正体、sandbagging問題、評価と切り離すか論争(Google完全分離 vs メルカリ折衷)、ノーレイティングの成功と揺り戻し(Adobe vs CEB反証)。→
- 第8章第8章: 組織文化と変革の実務、そして未来Scheinの3層モデル・競合価値観フレームワーク、診断型 vs 対話型OD(ワールドカフェ・OST・AIの実務手順)、カルチャーの明文化(Netflix 2024改訂・メルカリCulture Doc・サイボウズ・ゆめみ)、人的資本開示2026年府令改正とエンゲージメントKPI化の副作用、EU AI Act感情認識禁止、生成AI×組織開発、Great Detachmentと週4日制RCTが示す未来。→