企業概要
freee(フリー)は、クラウド会計ソフトを起点にスモールビジネスのバックオフィス全体をカバーする 統合型経営プラットフォームを提供する日本発のSaaS企業である。 2012年、Google出身の佐々木大輔が「中小企業のバックオフィスを自動化する」というビジョンのもとに創業。 2019年に東証マザーズ(現グロース市場)に上場し、2025年6月期には創業後初の通期営業黒字化を達成した。
ミッションは「スモールビジネスを、世界の主役に。」。 日本のビジネスの99.7%を占めるスモールビジネスをバックオフィス業務の手間から解放し、 自由に経営できる環境をつくることを目指す。 2026年には共同創業者の横路隆がCAIO(Chief AI Officer)に就任し、 AIネイティブカンパニーへの変革を本格化させている。
創業ストーリー・沿革
創業者の佐々木大輔は1980年、東京都台東区の美容院を営む家庭に生まれた。 開成中学校・高等学校を経て一橋大学商学部に進学。在学中にストックホルム商科大学に留学した。 卒業後は博報堂、CLSAキャピタルパートナーズ、AIスタートアップのALBERTを経て、 2008年にGoogleに入社。アジア太平洋地区の中小企業マーケティングを統括する中で、 中小企業のバックオフィスが依然として「同じデータを手作業で何度も入力し直す」非効率な状態にあることを痛感した。
「経営者が本業にフォーカスできるよう、全く新しいクラウド型会計ソフトを作りバックオフィスを自動化する」—— その思いから2012年7月にGoogleを退社し、freee株式会社を設立。 翌2013年3月にクラウド会計ソフト「freee」を正式リリースした。 簿記の知識がなくても直感的に使える設計が中小企業に刺さり、急速にユーザーを獲得。 2019年12月には東証マザーズに上場を果たした。
freee株式会社設立
佐々木大輔がGoogle退社後に創業。DCMより約5,000万円を調達
クラウド会計ソフト「freee」リリース
簿記不要の直感的UIで中小企業のバックオフィスを自動化
クラウド給与計算ソフトリリース
会計に次ぐ第2のプロダクトライン。後に「freee人事労務」にリブランド
会社設立freeeリリース・35億円調達
法人設立支援に進出。累計調達額45億円に到達
ミッション刷新
「スモールビジネスを、世界の主役に。」に改定。65億円調達で累計161億円
freeeアプリストアリリース
サードパーティ連携のエコシステム基盤を構築。100以上のアプリが掲載
東証マザーズ上場
公開価格2,000円・初値2,500円。上場時時価総額約1,166億円
統合型クラウドERP提供開始
freee会計・販売・人事労務を統合。ヒト・モノ・カネを一つのプラットフォームで管理
freee AIコンセプト発表
「統合flow × AI」を掲げ、AIエージェントによる業務自動化構想を発表
創業後初の通期営業黒字化
売上高332.7億円(+30.8%)、調整後営業利益18.85億円を達成
CAIO就任・AIネイティブカンパニー宣言
共同創業者の横路隆がCAIOに就任。まほう経費精算を提供開始
freee-mcp OSS公開
約270のAPIをMCPツール化。AIエージェントからfreeeを直接操作可能に
ビジネスモデル
freeeの収益モデルは月額/年額のSaaSサブスクリプションである。 売上高に占めるサブスクリプション収益の比率は約90%と非常に高く、 年額プランの選択率も高いため前受収益が大きく、安定したキャッシュフローを形成している。 売上総利益率は82〜83%と高水準を維持。
料金プラン(freee会計・法人向け)
| プラン | 対象 | 年払い月額 | 主な機能 |
|---|---|---|---|
| ひとり法人 | 従業員なしの法人 | 2,980円〜 | 基本的な会計機能 |
| スターター | 小規模法人 | 5,480円〜 | 確定申告・請求書 |
| スタンダード | 成長企業 | 8,980円〜 | 経費精算・請求書の自動化 |
| アドバンス | 中堅企業 | 39,780円〜 | ワークフロー・予実管理 |
| エンタープライズ | IPO準備〜大規模組織 | 要問合せ | 内部統制・監査対応 |
統合型ERPバリューチェーン
freeeのビジネスモデルの核心は、会計を起点としたクロスセル戦略にある。 freee会計で顧客を獲得し、人事労務→販売管理→経費精算と段階的に利用プロダクトを拡大させることで、 ARPUを持続的に向上させる。freee会計の5年以上ユーザーにおける人事労務の付帯率は約50%に達する。 この「統合flow」——Work flow(業務プロセス)、Data flow(データ可視化)、Communication flow(情報共有)——の 3つのフローが有機的に連携することで、データの二重入力を排除し、経営の意思決定を支援する。
graph TB
subgraph Entry["入口プロダクト"]
A["freee会計<br/>(クラウド会計)"]
B["freee人事労務<br/>(給与・年末調整)"]
end
subgraph Expand["拡張プロダクト"]
C["freee販売<br/>(見積〜請求〜入金)"]
D["freee支出管理<br/>(経費精算・請求書処理)"]
E["freee申告<br/>(法人税・消費税)"]
end
subgraph Platform["プラットフォーム"]
F["統合flow<br/>(Work / Data / Communication)"]
end
subgraph New["新領域"]
G["freeeカード<br/>(法人クレジットカード)"]
H["freee債権保証<br/>(金融サービス)"]
I["freee AI<br/>(AIエージェント)"]
end
A --> F
B --> F
C --> F
D --> F
E --> F
F --> G
F --> H
F --> I
style A fill:#3b82f6,stroke:#1e40af,color:#fff
style B fill:#3b82f6,stroke:#1e40af,color:#fff
style C fill:#8b5cf6,stroke:#6d28d9,color:#fff
style D fill:#8b5cf6,stroke:#6d28d9,color:#fff
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style F fill:#f97316,stroke:#c2410c,color:#fff
style G fill:#ec4899,stroke:#be185d,color:#fff
style H fill:#ec4899,stroke:#be185d,color:#fff
style I fill:#ec4899,stroke:#be185d,color:#fff
プロダクト・サービス
freeeは22以上のプロダクトを展開し、開業・法人設立から会計・人事労務・販売管理・経費精算まで、 スモールビジネスのバックオフィス業務を一気通貫でカバーする統合型経営プラットフォームを構築している。
| カテゴリ | 主要プロダクト | 概要 |
|---|---|---|
| 財務会計・申告 | freee会計 / freee申告 / freee連結会計 / freee経営管理 | 仕訳・決算・確定申告から連結会計・予実管理まで |
| 人事労務 | freee人事労務 / freee勤怠管理Plus / freee福利厚生 / freee健康管理 | 入退社・給与計算・年末調整・勤怠を一元管理 |
| 請求・販売 | freee販売 / freee工数管理 / freee請求書 | 見積〜受注〜請求〜入金をシームレスに連携 |
| 支出管理 | freee支出管理 / freee経費精算 / freee振込 / freeeカード | 支出の可視化・統制からクレジットカードまで |
| 開業・設立 | freee開業 / freee会社設立 / freee資金調達 | 開業届から法人設立・融資マッチングまで無料提供 |
| 新領域(2026年〜) | freee債権保証 / freee for 医療 / freee AIヘルプデスク | 金融サービス・業種特化・AI自動応答への拡張 |
2023年8月には統合型クラウドERPとしてfreee会計・販売・人事労務を統合リリース。 「ヒト(人事)、モノ(販売)、カネ(会計)」を一つの体験として提供し、 一度入力した情報が全プロダクトに自動連携する仕組みを実現した。 また、freeeアプリストアでは100以上の外部アプリと連携し、 Airレジ・Square・Salesforce・SmartHR・KING OF TIMEなど多数のサービスとデータを自動同期できる。
市場環境・競合
日本のクラウド会計・SaaS市場
MM総研の調査によると、個人事業主のクラウド会計利用率は2025年3月末時点で38.3%(前年33.7%から+4.6pt)と 着実に普及が進んでいる。インボイス制度(2023年10月開始)と電子帳簿保存法への対応が普及を加速させた。 日本のSaaS市場全体は2024年に約1.4兆円、2029年度には約3.4兆円(CAGR 11.6%)に成長する見込みだ。
競合比較:三つ巴の戦い
日本のクラウド会計市場は、freee・マネーフォワード・弥生の三つ巴の競争構造にある。 個人事業主市場では弥生が圧倒的シェアを持つが、法人向けクラウド会計ではfreeeがリードしている。
| freee | マネーフォワード | 弥生 | |
|---|---|---|---|
| 設計思想 | 統合型ERP(オールインワン) | モジュラー型(個別最適) | インストール型→クラウド移行中 |
| コアの強み | 簿記不要UI・統合flow・AI | 金融機関連携・士業チャネル | ブランド認知・低価格・24年連続売上1位 |
| ARR | 343.9億円 | 344.3億円 | 非公開(非上場) |
| ARR成長率 | +31.8% | +28% | — |
| 有料課金社数 | 60.6万社超 | 非公開 | 非公開 |
| 個人シェア(MM総研) | 24.0% | 14.3% | 55.4%(1位) |
| 法人クラウド会計シェア | 32.3%(1位) | 19.2% | 15.4% |
| AI戦略 | 統合flow×AI(自社完結型) | AIエージェントPF(エコシステム型) | AI-OCR・弥生会計Next |
| 黒字化 | 2025年6月期達成 | 2025年11月期達成 | 安定黒字 |
財務・成長指標
freeeは10年平均売上成長率65.46%という驚異的な成長を続けてきた。 長年の赤字成長フェーズを経て、2025年6月期にはインボイス制度対応投資の一巡とコストコントロールにより、 調整後営業利益18.85億円で創業後初の通期営業黒字化を達成した。
| 決算期 | 売上高 | 前年比 | ARR | 調整後営業利益 |
|---|---|---|---|---|
| 2021年6月期 | 102.6億円 | +48.0% | — | ▲24.4億円 |
| 2022年6月期 | 143.8億円 | +40.2% | — | ▲30.4億円 |
| 2023年6月期 | 192.2億円 | +33.7% | 206億円 | ▲79.2億円 |
| 2024年6月期 | 254.3億円 | +32.3% | 261億円 | ▲83.9億円 |
| 2025年6月期 | 332.7億円 | +30.8% | 343.9億円 | +18.9億円(黒字化) |
| 2026年6月期(予想) | 419.3億円 | +26.0% | — | +25.0億円 |
| 2027年6月期(目標) | 500億円超 | — | — | — |
IPO・資金調達
freeeは2019年12月17日に東証マザーズに上場。公開価格2,000円に対し初値2,500円(+25%)をつけた。 上場前のシリーズA〜Eで累計約161億円を調達。DCM Ventures、リクルート、三菱UFJ銀行、LINE等が出資した。 上場後の時価総額は2021年のSaaSバブル期に約5,593億円でピークを記録したが、 金利上昇環境で調整が進み、2026年3月時点では約1,315億円で推移している。
主要KPI
| 指標 | 数値 | 時点・備考 |
|---|---|---|
| 有料課金ユーザー数 | 606,533社(前年比+13.9%) | 2025年6月期末 |
| ARPU | 56,704円(前年比+15.8%) | 2025年6月期末 |
| サブスクリプション比率 | 約90% | 継続的に維持 |
| 売上総利益率 | 82〜83% | 2025年6月期 |
| 12ヶ月平均解約率 | 1.2% | 2023年6月期時点の公開データ |
| NRR目標 | 110% | 2027年6月期末目標 |
| トランザクションARR | 15.8億円(前年比+91.5%) | FY2026 Q1(freeeカード等) |
技術力
freeeの技術基盤は、Ruby on Railsをメインフレームワークとし、 Go・Java・Python等のマルチ言語環境で構築されている。 フロントエンドはReact + TypeScript、インフラはAWS(EKS/Aurora/S3)を採用。 コントローラ700〜800クラス、1,000〜2,000以上のエンドポイント、約70万行のJavaScriptという大規模システムを Kubernetes上のマイクロサービスアーキテクチャで運用している。
graph LR
subgraph Frontend["フロントエンド"]
A["React / TypeScript"]
B["Vite / Storybook"]
end
subgraph Backend["バックエンド"]
C["Ruby on Rails<br/>(メイン)"]
D["Go / Java"]
E["Python / Flask<br/>(ML/AI)"]
end
subgraph Infra["インフラ(AWS)"]
F["EKS<br/>(Kubernetes)"]
G["Aurora MySQL<br/>(メインDB)"]
H["S3 / SQS<br/>(ストレージ・キュー)"]
end
subgraph AI["AI / データ"]
I["BigQuery<br/>(データ分析)"]
J["PyTorch / TF<br/>(機械学習)"]
K["freee-mcp<br/>(AIエージェント連携)"]
end
A --> C
C --> F
F --> G
E --> J
J --> I
C --> K
style A fill:#3b82f6,stroke:#1e40af,color:#fff
style C fill:#dc2626,stroke:#991b1b,color:#fff
style D fill:#dc2626,stroke:#991b1b,color:#fff
style F fill:#f97316,stroke:#c2410c,color:#fff
style G fill:#f97316,stroke:#c2410c,color:#fff
style J fill:#8b5cf6,stroke:#6d28d9,color:#fff
style K fill:#8b5cf6,stroke:#6d28d9,color:#fff
技術面での特筆点は機械学習の実務適用だ。 請求書消込の精度を70%から97%に向上させ、 Kinesis + DynamoDBによるリアルタイム異常検出では20ミリ秒以下のレスポンスを実現している。 認証認可基盤のマイクロサービス化(2019〜2022年)により、複数プロダクトを1つのIDで利用可能にした。
2026年3月にはfreee-mcpをOSSとして公開。約270のAPIをMCPツール化し、
Claude Desktop・Claude Code・Cursorなどの主要AIツールからfreeeのAPIを直接操作可能にした。
「Agent Skills」により、AIが業務文脈を理解した正確な操作を実現する。
同月にはリモート版(https://mcp.freee.co.jp/mcp)もリリースし、
ローカル環境構築なしでAIエージェント連携を可能にした。
組織・文化
freeeの組織文化は「マジ価値」を中核概念とする。 「ユーザーにとって本質的な価値があると自信を持って言えることをする」という考え方が、 採用・評価・日常のコミュニケーション全ての判断基準の中心に位置する。
マジ価値指針(5つの行動基準)
| 指針 | 意味 |
|---|---|
| 理想ドリブン | 現在のリソースにとらわれず、理想から逆算して考える |
| アウトプット→思考 | 完璧を求めずまず形にし、フィードバックで改善を繰り返す |
| Hack Everything | あらゆることをハックし、枠を超えて発想する |
| ジブンゴーストバスター | フィードバックを求め、自己認識を高めて進化し続ける |
| あえて、共有する | オープンに共有しフィードバックし合うことで全社で学習・成長する |
経営チーム
freeeはCEO・CTO・CFO・CAIO・CGO・CIO・CISO・CBIO・CAAOと 9名のCxOを擁する経営体制が特徴的だ。 CEO佐々木大輔はフォーブス日本の起業家ランキングトップ10に3年連続選出(2015〜2017年)。 2026年2月には共同創業者の横路隆がCAIO(Chief AI Officer)に就任し、 「SaaSは人が使うものからAIが使うものへ変わった」という認識のもと、AI戦略を強力に推進している。
エンジニアリング文化では「何でもやれる、何でもやる」というフルスタック志向を掲げ、 AI駆動開発を全社的に推進。Cline・Claude Code・Devin・GitHub Copilot等のAIツールを組織的に導入し、 新人研修には独自のセキュリティ演習(Hardening研修)を組み込んでいる。 「働きがいのある会社」に8年連続でベストカンパニーに選出されている。
AI戦略・今後の展望
freeeの2026年の戦略は「統合flow × AI」に集約される。 エージェンティックAI時代において、SaaSの主要ユーザーが「人間」から「AIエージェント」に移行すると見据え、 「freeeはAIにとって最も使いやすい。だからAI時代に選ばれる」というポジションを目指している。
AI戦略の2つの柱
今後の成長ドライバー
freeeはFY2027(2027年6月期)に売上500億円超を目標に掲げ、以下の成長戦略を推進している。
① AI融合による差別化: freee AI(Auto Pilot / Cockpit)とfreee-mcpにより、バックオフィス業務の自律的自動化を実現。 「AI CFO」の実現を長期ビジョンとして掲げ、単なる自動化ではなく経営の意思決定の高度化を目指す。
② Mid層(中堅企業)の開拓: Mid層ARRは103.6億円を突破(FY2025 Q1)。人事労務領域のMid層5年CAGRは51%と顕著な成長。 2026年春には上場準備企業向け「freee経営管理」をリリースし、上位市場への浸透を強化する。
③ M&Aによる領域拡張: 2025年にはYUI(連結会計)・GMOクリエイターズネットワーク(FREENANCE)を買収、 2026年にはロジクラ(物流・在庫管理)を完全子会社化。統合型ERPの領域を着実に拡張している。
④ クレジットカード事業の急成長: freeeカード等のトランザクションARRはFY2026 Q1で15.8億円(前年比+91.5%)と爆発的に成長。 freee債権保証では三井住友銀行・みずほファクター・三菱UFJファクターと業務提携し、金融サービスを拡充している。
課題・リスク
一方で、マネーフォワード・弥生との競争激化、インボイス制度特需の反動による成長率鈍化リスク (FY2026は+23〜26%とFY2025の+30.8%から減速見通し)、矢継ぎ早なM&Aに伴う統合負荷、 そして「SaaS is dead」論の台頭に対しAIエージェント時代にSaaSの価値をどう再定義するかという構造的課題に直面している。
理解度チェック
freee創業者の佐々木大輔が、起業前に最後に在籍していた企業はどこですか?
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