企業概要

LayerXは、「すべての経済活動を、デジタル化する。」をミッションに掲げ、 法人支出管理SaaS・デジタル証券・エンタープライズAIの3事業を同時展開するコンパウンドスタートアップである。 東京大学大学院・松尾豊研究室出身の福島良典が2018年にブロックチェーン企業として設立。 しかし「日本企業のデジタル化はブロックチェーン以前の段階にある」と気づき、 2021年にバックオフィスSaaS「バクラク」へ大胆にピボットした。 そこから約5年でARR100億円に到達し、国内SaaS最速クラスの成長軌道を描いている。

LayerXの最大の特徴は、SaaS・Fintech・AIの3事業が相互にシナジーを生む「コンパウンド経営」だ。 バクラクで蓄積した企業の業務データとドメイン知識がAi Workforceの精度向上に寄与し、 Fintech事業で培った大企業との関係性がAi Workforceのエンタープライズ開拓に活きる。 2025年4月には行動指針を「Bet AI」にアップデートし、 全社的にAIネイティブ組織への変革を加速。 2030年度にARR 1,000億円(うちAIエージェント関連500億円)という野心的な目標を掲げている。

創業ストーリー・沿革

創業者の福島良典は、東京大学大学院工学系研究科(松尾豊研究室)でコンピュータサイエンス・機械学習を専攻。 2012年、大学院在学中にニュース推薦アプリGunosyを創業し、わずか2年4ヶ月で東証マザーズ上場を果たした。 2012年度IPA未踏スーパークリエータ認定、2016年Forbes Asia「30歳未満」選出など華々しいキャリアを築いた。

しかし福島は「極めたものを捨て去る覚悟」を経営哲学に掲げる。 Gunosyの経営基盤が安定すると、「コンシューマーの世界は一変したが、ビジネス領域では非効率なまま」 という問題意識から、B2Bのデジタル化に自ら挑むことを決断。 2018年8月、Gunosyの新規事業としてLayerXを設立し、ブロックチェーン技術による経済活動のデジタル化を目指した。

当初はブロックチェーンコンサルティング事業を展開し、 三菱UFJフィナンシャル・グループとの協業や、日本初のEthereum Foundation Grants Program選定など技術的実績を積み上げた。 しかし、クライアントと向き合う中で「日本はブロックチェーンなんて言ってる場合じゃない」という現実に直面する。 企業は請求書を紙でやり取りし、目視でチェックし、手作業で送金していた—— ブロックチェーン以前に、基本的なソフトウェア技術すら活用できていなかったのだ。

2019年にMBO(経営陣買収)でGunosyから独立。 そして2021年8月、福島はnoteで「LayerXはもうブロックチェーンの会社じゃありません」と宣言し、 法人支出管理SaaS「バクラク」への転換を公表した。 約30億円の資金的余裕と約30名の小規模組織という身軽さが、大胆なピボットを可能にした。 福島の経営哲学は明快だ——「正解があるんじゃない、正解にするんだ」

Gunosy創業

福島良典が東大院在学中にニュース推薦アプリGunosyを創業。約2年半で東証マザーズ上場を達成

LayerX設立

Gunosyの新規事業としてブロックチェーン企業LayerXを設立。「すべての経済活動を、デジタル化する」をミッションに掲げる

MBOで独立

Gunosyからの経営陣買収で完全独立。迅速なピボットが可能な体制に

Ethereum Foundation選定

日本初のEthereum Foundation Grants Program対象企業に。ブロックチェーン技術力を証明

三井物産と協業開始

後に合弁会社「三井物産デジタル・アセットマネジメント(MDM)」を設立。Fintech事業の基盤に

プレシリーズ 約30億円調達

ジャフコ、ANRI、YJ Capital(現Z Venture Capital)から調達。複数回のピボットに耐える資金を確保

バクラク提供開始

法人支出管理SaaS「バクラク請求書受取」をローンチ。AI-OCRによる請求書の自動データ化でバックオフィスDXに参入

松本勇気がCTO就任

Gunosy CTO→DMM CTO を経て代表取締役CTOに。開発組織・Fintech・AI事業を統括

ピボット宣言

福島CEOが「もうブロックチェーンの会社じゃない」とnoteで宣言。SaaS事業への全面転換を公表

シリーズA 55億円調達

三井物産がリード。累計調達額は約82億円に。2026年度末ARR100億円を目標に掲げる

シリーズA累計102億円完了

Keyrock Capital等が参加し総額102億円に。設立5年のシリーズAとして国内最大級

バクラク累計10,000社突破

提供開始から約3年で導入社数1万社を達成

Ai Workforce提供開始

エンタープライズ向けAIプラットフォームをローンチ。AI・LLM事業の本格展開が始まる

行動指針「Bet AI」へ

「Bet Technology」から「Bet AI」にアップデート。AIを10年に一度のパラダイムシフトと位置づけ

シリーズB 150億円調達

米TCV主導(日本初投資)。累計282億円、推定評価額1,000億円でユニコーン入り

ARR 100億円達成

全社ARRが100億円に到達。T2D3を上回り「AI Shooting Stars」に近い成長軌道

バクラク給与リリース

給与計算SaaSを正式リリース。人事労務領域への本格拡大。累計13プロダクトに

ビジネスモデル

LayerXは「お金の流れ」に関わる1,000兆円超の市場において、 SaaS・Fintech・AIの3事業を同時展開する「コンパウンド経営」を採用している。 各事業が独立して収益を生みつつ、データ・顧客基盤・技術で相互にシナジーを形成する構造だ。

graph TB
    subgraph Core["ミッション: すべての経済活動を、デジタル化する。"]
        direction TB
        AI["AI / LLM 技術基盤"]
    end

    subgraph Bakuraku["バクラク事業(法人支出管理SaaS)"]
        B1["請求書受取・発行"]
        B2["経費精算・稟議"]
        B3["法人カード・債権管理"]
        B4["勤怠・給与"]
    end

    subgraph Fintech["Fintech事業(三井物産デジタル・アセットマネジメント)"]
        F1["ALTERNA<br/>個人向けデジタル証券"]
        F2["ファンド組成・運用<br/>AUM 2,000億円超"]
    end

    subgraph AiW["AI・LLM事業(Ai Workforce)"]
        A1["エンタープライズ向け<br/>AIプラットフォーム"]
        A2["文書構造化<br/>業務自動化"]
    end

    Bakuraku -->|業務データ蓄積| AI
    AI -->|AI-OCR・自動仕訳| Bakuraku
    AI -->|LLM文書処理| AiW
    Fintech -->|大企業との関係性| AiW
    Bakuraku -->|顧客基盤| AiW
    AI -->|ブロックチェーン技術| Fintech

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    style Bakuraku fill:#3b82f6,stroke:#1d4ed8,color:#fff
    style Fintech fill:#f97316,stroke:#c2410c,color:#fff
    style AiW fill:#8b5cf6,stroke:#6d28d9,color:#fff
    style AI fill:#14b8a6,stroke:#0d9488,color:#fff
LayerXの3事業構造: バクラク(青)・Fintech(橙)・Ai Workforce(紫)がAI技術基盤(緑)を介して相互にシナジーを形成する

バクラク事業(法人支出管理SaaS)

LayerXの収益の主力。企業のバックオフィス業務をAIエージェントで自動化する統合型SaaSプラットフォーム。 SaaS月額課金が基本の収益モデルで、 バクラク請求書受取Starterプランは月額44,000円(100枚/月まで、ユーザー数無制限)から提供。 加えてバクラクビジネスカードの決済手数料収入、 バクラク受領代行・承認代行のBPOサービス料が補完的な収益源となる。

Fintech事業(三井物産デジタル・アセットマネジメント)

三井物産・SMBC日興証券・三井住友信託銀行との合弁会社MDMを通じて、 不動産・インフラ等の実物資産をデジタル証券(セキュリティトークン)として証券化。 個人向け投資サービス「ALTERNA」では1口10万円から小口投資が可能だ。 収益はファンド運用報酬(AUM連動)、ファンド組成手数料取引手数料で構成。 AUM(運用残高)は2,000億円超、累計17本のファンドを組成し国内最多。

AI・LLM事業(Ai Workforce)

2024年6月に提供開始したエンタープライズ向けAIプラットフォーム。 「全てのファイルを構造化し活用する」がコア戦略で、 ナレッジ・スキル・ツール・UIの4コンポーネントを組み合わせて業務固有のAIエージェントを構築する。 三菱UFJ銀行では年間20万時間の削減を目標にAIエージェント基盤を導入。 収益はプラットフォーム利用料(SaaS型月額課金)とプロフェッショナルサービス(導入支援・コンサルティング)。

プロダクト・サービス

バクラクシリーズは2021年の請求書受取を皮切りに、約半年に1つのペースで新プロダクトをローンチし、 2026年3月時点で累計13プロダクトに拡大している。 コア技術のAI-OCRは請求書・領収書を5秒でデータ化し、累計1.2億回の手作業を削減した。 最大の差別化ポイントは「会計ソフト中立」のポジション—— freee会計、マネーフォワード クラウド会計、勘定奉行、弥生会計、TKCなど主要会計ソフトすべてとAPI連携し、 既存の会計ソフトを変えずに導入できる。

カテゴリ プロダクト 概要
債権債務 バクラク請求書受取 AI-OCRで請求書を自動読取・仕訳・振込データ作成。インボイス制度対応
債権債務 バクラク経費精算 領収書をAIで5秒データ化。交通費・出張精算対応
債権債務 バクラク稟議・申請 AIが承認フローを進行し差し戻しを削減
債権債務 バクラク請求書発行 基幹システム連携で作成・送付・督促を自動化。2026年4月にカード決済オプション追加
債権債務 バクラクビジネスカード 法人カード利用データを自動で経費精算に連携
債権債務 バクラク電子帳簿保存 電子帳簿保存法に完全対応。タイムスタンプ自動付与
債権債務 バクラク支出分析 支出異常のリアルタイム可視化、AIによる要因分析
債権債務 バクラク債権管理 入金消込を98%自動化、未入金督促を自動対応(2025年3月〜)
人事労務 バクラク勤怠 リアル打刻率80%、月次勤怠締め早期化、工数管理機能付き(2024年11月〜)
人事労務 バクラク給与 給与計算前後の業務をミスなく自動化。勤怠・経費精算と連携(2026年3月〜)
AIエージェント バクラク社内問合せ対応 質問対応からマニュアル更新までAIが自動対応
BPO バクラク受領代行 郵送・メール・DL形式の請求書をまるごと代行
BPO バクラク承認代行 企業規程に基づく経費精算承認を代行
Fintech ALTERNA(オルタナ) 1口10万円から不動産デジタル証券に投資可能。AUM2,000億円超・累計17本
AI Ai Workforce エンタープライズ向けAIプラットフォーム。文書構造化・業務自動化

市場・競合環境

バクラクが狙う法人支出管理(BSM)市場は国内2兆円超。 インボイス制度(2023年10月施行)と改正電子帳簿保存法(2024年1月義務化)が市場成長の強力なドライバーとなり、 SaaS型請求書受領サービス市場は2025年に約1,212億円規模に達した。 バクラクはこの市場で後発ながら、AI-OCRの速度会計ソフト中立のポジションで急成長している。

企業 / プロダクト ARR 導入社数 YoY成長率 特徴
バクラク(LayerX) 100億円(全社) 15,000社 推定50%超 会計ソフト中立・AI-OCR・13プロダクト統合
Bill One(Sansan) 118億円 有料3,619社 +40〜48% 請求書受領代行モデル・ネットワーク21.6万社
マネーフォワード SaaS 300億円超 非公開 +31% 自社会計ソフトとの一気通貫・会計事務所カバー率84%
freee 340億円超 60万事業所超 +36% SMB中心・統合型プラットフォーム
楽楽精算(ラクス) クラウド事業 約418億円 20,000社超 +25%前後 経費精算市場シェアNo.1・15年の実績
TOKIUM 非公開 2,500社超 非公開 オペレーター確認+AI-OCRのハイブリッド・精度99.9%

競合との差別化構造は明確だ。 マネーフォワードとfreeeは自社会計ソフトとの囲い込み戦略を取るが、 バクラクは既存の会計ソフトを変えずに導入できる「ベストオブブリード」のポジション。 Bill Oneは請求書の「受領代行」モデル(仕入先からの郵送・メールを代理受領)で高精度を実現するが、 バクラクは「セルフサービス型」(自社アップロード→AI-OCRで5秒データ化)で速度を重視。 楽楽精算は経費精算市場で圧倒的シェアNo.1だが、バクラクは支出管理全体の統合プラットフォームとして勝負する。

Fintech事業では、デジタル証券(セキュリティトークン)市場でファンド組成〜運用〜販売の一気通貫という ユニークなポジションを確立。 基盤提供者のBoostry(野村HD系)やProgmat(三菱UFJ系)、販売チャネルの大和証券とは異なる 「アセットマネジメント×テクノロジー」のレイヤーで差別化している。

財務・成長

LayerXは2020年のプレシリーズ(30億円)から始まり、シリーズA(累計102億円)、 シリーズB(150億円)と3段階の資金調達を経て、累計約282億円を調達した。 シリーズBでは米国の大手VC TCV(Netflix、Spotify等への投資実績)が日本スタートアップへの初投資としてリード。 推定評価額は約1,000億円に達し、ユニコーン企業の仲間入りを果たした。

LayerX 売上高・ARR推移(億円)

LayerX 従業員数の推移(名)

※第7期売上高55.9億円は決算公告ベース。ARR(2026/1)はARR100億円(年換算)を参考値として表示。第6期の売上高は報道からの推定値

ラウンド 時期 調達額 主要投資家
プレシリーズ 2020年5月 約30億円 ジャフコ、ANRI、YJ Capital(現Z Venture Capital)
シリーズA 1st 2023年2月 約55億円 三井物産(リード)、ALL STAR SAAS FUND、GMO VP、ANRI等
シリーズA 2nd 2023年6月 約26.8億円 JIC VGI、三菱UFJイノベーション・パートナーズ、DIMENSION等
シリーズA 3rd 2023年11月 20億円 Keyrock Capital Management(海外機関投資家)
シリーズB 2025年9月 150億円 TCV(リード、日本初投資)、三菱UFJ銀行、ジャフコ、Keyrock等

財務面では現在成長投資フェーズにあり、第7期(2025年3月期)は売上高55.9億円に対し 当期純損失37.4億円を計上。販管費約75億円を人材獲得・マーケティングに積極投下している。 一方で粗利率は約70%と高水準で、SaaSビジネスとしての収益性は健全だ。 流動資産約286億円の潤沢な手元資金を持ち、複数年の赤字に耐えうる財務基盤を確保。 黒字化は「バクラク事業が成熟しハーベストフェーズに入った段階」で達成する方針で、 その先にIPOが「大きなマイルストーン」として視野に入っている。

組織・文化

LayerXの経営は2人の代表取締役が率いる。 CEO福島良典がビジョン・事業戦略・全社経営を統括し、 CTO松本勇気(Gunosy CTO→DMM CTO→LayerX)が開発組織・Fintech・AI事業を統括する。 2025年10月には、ラクスル元COOの福島広造が上級執行役員COO兼バクラク事業CEOに就任し、 経営体制をさらに強化した。

組織は3事業部制を採用。 各事業部は高い独立性を持ち、3〜5名の自律的なプロダクト開発チームで構成される 「スタートアップの集合体」のような運営形態だ。 従業員数は2023年10月の約220名から2026年1月の582名へと2年強で2.6倍に急成長。 新卒エンジニアに1,000万円超のオファーを出すなど、人材獲得にも積極的だ。

5つの行動指針

LayerXのカルチャーを象徴するのが、5つの行動指針だ。 特に筆頭の「徳」は、スタートアップでは珍しい日本的な概念を経営に取り入れた独自のアプローチ。 短期的な売上至上主義に走らず、長期的な信頼を積み上げることが競争優位になるという福島の信念を反映している。 これらは半年ごとにアップデートされる「LayerX羅針盤」として社内に浸透している。

graph LR
    subgraph Values["LayerX 5つの行動指針"]
        V1["🔵 徳<br/>長期的な社会貢献<br/>短期的売上至上主義を排除"]
        V2["🟢 Trustful Team<br/>プロとしての信頼<br/>透明なコミュニケーション"]
        V3["🟣 Bet AI<br/>AIは10年に一度の<br/>パラダイムシフト"]
        V4["🟠 Fact Base<br/>ファクトに基づく<br/>柔軟・冷静な行動"]
        V5["🔴 Be Animal<br/>コンフォートゾーンを出る<br/>現場主義"]
    end

    V1 --> V2
    V2 --> V3
    V3 --> V4
    V4 --> V5

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    style V4 fill:#f97316,stroke:#c2410c,color:#fff
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LayerXの5つの行動指針。2025年4月に「Bet Technology」を「Bet AI」にアップデート

技術力

LayerXのエンジニアリング文化の核は「爆速開発」だ。 CTO松本は「素早く開発する」だけでなく、「共通ツール・知識の積み上げ、意思決定軸の統一、 作ったものを捨てることをいとわない」姿勢を包含すると定義。 バクラク事業だけで2週間に1つのペースでAIエージェントプロダクトを20以上リリースした実績がこれを裏付ける。

カテゴリ バクラク事業 Ai Workforce事業
バックエンド Go Python(FastAPI)
フロントエンド Nuxt.js + TypeScript、React Next.js + TypeScript
API GraphQL(Apollo) GraphQL(Strawberry)
インフラ AWS(Aurora、DynamoDB、Fargate ECS) Microsoft Azure(Container Apps)
DB MySQL SQLAlchemy(ORM)
AI / ML PyTorch、TensorFlow、SageMaker Azure OpenAI、Azure AI Document Intelligence
検索 OpenSearch Azure AI Search
ワークフロー Temporal Celery
IaC Terraform Terraform
CI/CD GitHub Actions GitHub Actions
監視 Datadog
データ分析 BigQuery、dbt、Redash

技術選定の特徴は、事業部ごとに最適なスタックを選択している点だ。 バクラク事業はGoとAWSで高速・堅牢なSaaS基盤を構築し、 Ai Workforce事業はPythonとAzureでLLM/AIのエコシステムを最大限に活用する。 日本マイクロソフトとの密接な連携のもと、Azure OpenAI + Azure AI Document Intelligence + Azure AI Searchの組み合わせで エンタープライズ向けのセキュリティ要件に対応している。

戦略・展望

LayerXの成長戦略は「Bet AI」の一語に集約される。 福島CEOは「すべてのスタートアップには、もはや2年の猶予しか残されていない」と警鐘を鳴らす。 AI開発速度が標準化される中、大企業もスタートアップと同等の開発能力を獲得しつつあり、 この期間内にディストリビューション(顧客基盤)を最大限拡張する必要がある——これがLayerXの戦略の根幹だ。

具体的な目標は2030年度ARR 1,000億円、うちAIエージェント関連事業で500億円。 従業員も2028年度までに1,000名体制を目指す。 バクラク事業では「プロダクト単品でもARR100億円を目指せるもの」を開発基準に設定し、 法人支出データを中心にプロダクトを横串で配置するコンパウンド戦略を推進。 AI Workforce事業では、Microsoft Copilotなどビッグテック(福島氏は「魔王」と呼ぶ)との差別化として、 企業固有の「ポータブルでないスキル」——契約書レビュー、決算書分析、業界特有の文書処理——に特化する。

graph LR
    subgraph Now["現在(2025-2026)"]
        N1["ARR 100億円達成"]
        N2["バクラク 13プロダクト"]
        N3["Ai Workforce 本格展開"]
        N4["従業員 582名"]
    end

    subgraph Mid["中期(2027-2028)"]
        M1["バクラク AIエージェント化<br/>業務の完全自動運転"]
        M2["Ai Workforce<br/>エンタープライズ拡大"]
        M3["従業員 1,000名体制"]
        M4["IPO準備"]
    end

    subgraph Future["長期(2030年)"]
        F1["ARR 1,000億円"]
        F2["AIエージェント関連<br/>ARR 500億円"]
        F3["コンパウンド<br/>プラットフォーマー"]
    end

    N1 --> M1
    N2 --> M1
    N3 --> M2
    N4 --> M3
    M1 --> F1
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    M3 --> F3
    M4 --> F1

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    style N2 fill:#3b82f6,stroke:#1e40af,color:#fff
    style N3 fill:#3b82f6,stroke:#1e40af,color:#fff
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    style M2 fill:#8b5cf6,stroke:#6d28d9,color:#fff
    style M3 fill:#8b5cf6,stroke:#6d28d9,color:#fff
    style M4 fill:#8b5cf6,stroke:#6d28d9,color:#fff
    style F1 fill:#f97316,stroke:#c2410c,color:#fff
    style F2 fill:#f97316,stroke:#c2410c,color:#fff
    style F3 fill:#f97316,stroke:#c2410c,color:#fff
LayerXの成長ロードマップ: 現在のARR100億円フェーズ(青)→ 中期のAIエージェント化・IPO準備(紫)→ 2030年のARR1,000億円(橙)

課題とリスク

LayerXの挑戦にはいくつかのリスクも伴う。 第一に、収益化の時間軸——第7期で37.4億円の純損失を計上し、累積赤字は86.4億円。 潤沢な手元資金があるとはいえ、黒字化への道筋が重要だ。 第二に、競合の大きさ——バクラクのARR・市場シェアは マネーフォワード(SaaS ARR 300億円超)やfreee(ARR 340億円超)に対してまだ差がある。 第三に、AI事業の不確実性——Ai Workforceは2024年6月提供開始で歴史が浅く、 LLMの性能向上でソリューションの差別化が難しくなるリスクがある。 第四に、急成長する組織の文化維持——2年で220名→582名と急拡大する中、 「徳」を核としたカルチャーをどう浸透させ続けるかが課題だ。

しかし、国内SaaS最速クラスのARR100億円到達、 サービス継続率99%以上、粗利率70%という健全なSaaS KPI、 TCV・三井物産・三菱UFJ銀行という強力な投資家・パートナー陣容、 そして「Bet AI」という明確な方向性—— これらが組み合わさることで、LayerXは日本のSaaS市場における次のゲームチェンジを起こす可能性を秘めている。 ブロックチェーンからSaaSへ、そしてAIネイティブ企業へ—— 「正解があるんじゃない、正解にするんだ」という福島の哲学が、これからも同社の歩みを導くだろう。

参考文献

理解度チェッククイズ

理解度チェック

問題 0 / 50%
Q1

LayerX CEO 福島良典が、LayerX設立前に創業・上場させた企業はどれか?

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